第3話
パッパー
キツネはまた2回クラクションを鳴らすと流れ星を上手によけてみせた。
下を見下ろせば月の光に輝く家の屋根が、
星のように光っている。
空と地上が逆転したみたいに。
すると、バスはがたがた揺れ出して前がみえなくなった。
「ここはひつじ高原。ひつじのため息が雲になるんだ。」
いきなりぱっと雲が晴れて、
白いひつじがぽつぽつと遠くに見えた。
すると、
遠くにある雲の海の中を泳ぐくじらの群れがいた。
「あぁ、あそこはくじら谷。やつらが雨を降らしているんだよ。」
くじらが潮をふくたびに、キラキラと水しぶきが光った
キツネは興味なさそうにしたけれど、
女の子の輝く顔を見て、バスを谷の近くまで走らせることにした。
バスは少し揺られて急浮上すると、窓ガラスに雨が強くたたきつけられた。
「この分じゃ、ぞうの丘も近いかも。ぞうはあの長い鼻で風を吹かせているんだよ。」
風で流されてきた流れ星が窓をかすめた。
ぞうの姿は見えないけれど、風はかなり強かった。
「こんなに素敵なバスなのに。お客さんなぜいないのかしら?」
思わず女の子は窓の外にくぎづけになりながらキツネに聞いた。
キツネはていねいに流れ星をよけながら、何も答えなかった。
だけど風が収まったころ、
「ずっと昔、君が乗ったバス停から男の子を乗せたことがあるんだ。」
と話はじめた。
つづく
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