第1話
第2話
静かな夜に、
ボーン
屋根裏部屋の柱時計が1回鳴った。
(やっぱり今日だ!)
壊れているはずの時計がまた鳴ったのだ。
息をのんでベッドからおりると
床のつめたい感触がさらにドキドキさせた。
その時、カーテンの隙間から一瞬光が差し込み、
そのあとにまた、窓の外に大きな黒い影。
と同時に、
パッパー
車のクラクションの音。
「お客さん、乗るの乗らないの?どっち?」
甲高い声がした。
おそるおそるカーテンを開けると、そこには鋼色のバス。
運転席からは白キツネの運転手が顔をのぞかせていた。
「最近じゃぁ、お客なんてめずらしいよ。そこの時刻表をみてごらん。」
気づいたら窓枠のところに、一枚の紙きれが貼ってある。
真夜中の12時にひとつだけ、星の印が書かれている。
「昔、このバスはいつも満員だったんだ。何回まわっても足りないくらい。それが今じゃ、月の明るい夜に一便だけ。それに、お客が君だけだって?」
キツネの運転手はくくく、と笑ったけれど、
どこか淋しそうだった。
「私乗るわ。こんなチャンスないもの。」
女の子は目を輝かせた。
ドキドキはワクワクに変わっていた。
自分の部屋の窓の外にバスが止まっているなんて!
「そうかい。それじゃ、早く乗ってくれ。」
「でも、どうして私だけなの?」
キツネは前を向いたまま一瞬だまって、
かわりにパッパーとクラクションを2回鳴らした。
そして小さな声で、
「そのうち君にもわかるさ。」
とつぶやいた。
「じゃあ、出発するよ。だけどひとつ守ってほしいことがあるんだ。」
「なぁに?」
「このバスのことは誰にも言っちゃいけないよ。」
「うん!約束する!」
キツネが一瞬とてもうれしそうな顔をしたのを、
女の子は気づかなかった。
つづく
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