Tuesday 27 July 2010

vol.363 連載【story in the song】Raining 第2話 



story in the songは歌からインスピレーションをうけた物語を書いています。




story song : Raining/cocco


第1話






第2話






「これを。」




手渡された白い封筒の中にあったのは私の名前だった。
「本当に面識はないんです。なんで私なのか、全然わからなくて…。」
彼女が突然飛んでから一週間。
哀しくなるような残暑の強い夕方、彼女の母親に呼ばれ家を訪れていた。
便箋を取り出すと、手が震えてカサカサと音を立てる。
(どうして私が…?)
西日のオレンジが影を落とす白い便箋には、
綺麗な黒い文字でこう書かれていた。




『大井ひかり様、私は三人の秘密を守れなかった。思い出してあなたがエミリーを
救って。』




(…これは三人だけの秘密よ。)




声が聞こえた。
遠くおぼろげな記憶の向こうから。
でも、ある輪郭が
突然白いもやの中に浮かんだ。
はっきりと。




「…エミリーは昔、私が大事にしてた人形の名前…」


ヘーゼル色の瞳と赤い髪の女の子。
その直後の引っ越しと同時に無くしてしまった。
無くしてしまった?
気づいたら、いなかった。
というほうが正しいか。




(へぇエミリー、きれいな子ね。)
(…あなたは誰?)
(私、私は…)






「…あなたやっぱり絵美理のこと知ってるのね。」






彼女の名前は伊川絵美理。
私と彼女は、確かに10年前の夏に会っている。






つづく









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