Thursday 20 August 2009

vol.267  連載【story in the song】Raining 第1話

Story in the songは、歌からインスピレーションをうけた物語を書いていきます。


story song:  Raining / cocco 


第1話


「なんて名前なの?」
「エミリー。」
「へぇ、エミリー、きれいな子ね。」「あなたは誰?」
「私?私は…」




むせ返るような夏の昼下がり。
彼女は誰だったか。
思い出せない記憶の紐をたぐり寄せてもぷつんと途中で切れる。
そんなことを繰り返して5時間目の授業が終わろうとしている。
その時、窓から見える青すぎる空に反射するように、
反対側の校舎から白いものが落ちた。
それが、自分も着ているセーラー服だとわかるまで、5秒。
絶叫と絶句が交わる中、
窓に駆け寄るみんなの隙間から赤いバラを背負ったようにみえる
白いセーラーが見えた。




(あの子は落ちたのではなく、自分から飛んだんだ。)






なぜわかるのかわからないけど、冷静に確実にそう思った。
さっき途中で切れた紐が繋がるような気さえしていた。






「…これは3人だけの秘密よ。」
「うん、わかった。」
「エミリーも?」




あの日も確か
今日みたいな暑い夏の日。






つづく




No comments: