Story in the songは、歌からインスピレーションをうけた物語を書いていきます。
story song: Raining / cocco
第1話
「なんて名前なの?」
「エミリー。」
「へぇ、エミリー、きれいな子ね。」「あなたは誰?」
「私?私は…」
むせ返るような夏の昼下がり。
彼女は誰だったか。
思い出せない記憶の紐をたぐり寄せてもぷつんと途中で切れる。
そんなことを繰り返して5時間目の授業が終わろうとしている。
その時、窓から見える青すぎる空に反射するように、
反対側の校舎から白いものが落ちた。
それが、自分も着ているセーラー服だとわかるまで、5秒。
絶叫と絶句が交わる中、
窓に駆け寄るみんなの隙間から赤いバラを背負ったようにみえる
白いセーラーが見えた。
(あの子は落ちたのではなく、自分から飛んだんだ。)
なぜわかるのかわからないけど、冷静に確実にそう思った。
さっき途中で切れた紐が繋がるような気さえしていた。
「…これは3人だけの秘密よ。」
「うん、わかった。」
「エミリーも?」
あの日も確か
今日みたいな暑い夏の日。
つづく
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