Friday 7 May 2010

vol.348 【コラム】ラストピースの男 小野伸二




2010年ワールドカップ出場は決めたもの、精彩をかいてきた日本代表。2006年のジーコジャパンがドイツ大会で惨敗し中心的存在だった中田英寿氏が引退してから迷走時代に突入した。
2002年日韓大会のワールドカップベスト16という輝かしい記録を国民は鮮明に覚えている。その国民の期待ばかりが先走りしたドイツ大会は初戦のオーストラリア戦でチームがバラバラになったままそれがひとつになることなく大会を終え、"2002年の魔法"はついに解け国民は夢から醒めた。


イビチャ・オシム氏が監督に就任し「日本にしかできないサッカー」を目指しながら病に倒れ、日本はその意志をついでくれる監督を探した。
就任したのは98年フランスワールドカップで土壇場の監督交代劇ののち初出場に導いた岡田武史氏だった。日本サッカーに厳しくも温かい愛を注ぐオシム氏の意志をそのまま継げるのは日本人監督でしかありえなかった。


2002年の記憶は国民をも天狗にした。と私は思う。
相手が強豪国でなければ、客の入りさえぱっとしなくなった。
中田氏の去ったチームは緊張感とカリスマ性をなくしたまま時間だけが過ぎていった。
その一方で「ベスト4」を掲げる岡田監督は滑稽にうつって、さらに国民をしらけさせた。
しかし中田氏は「サッカー協会は本当に最高のひとを監督に選んだ。」とメディアに語った。
98年、共にワールドカップを戦った彼は、「ベスト4」と宣言し、世界のサッカー関係者に笑われ続ける岡田監督の真意を見抜いていたのかもしれない。


日本には「ことだま」という力があり、それが時にすごいパワーを生み出すことを知っている指揮官は、「目標はベスト4」といい続ける。それを信じない選手はロッカールームにはいらない、とも。
それでも試合に勝てず、メディアやもはやサポーターとは呼べない人々のバッシングは加速するばかりで、負のループが続いている。この直前になってもパッとしたサッカーができずさらにバッシングは勢いをつける。


(何かが足りない日本代表。それは何か)


ネガティブな報道、ネガティブな予想。中心選手の怪我・体調。すべての流れがネガティブな方向に傾いてる今、唯一輝きをはなっているポジティブな存在。清水エスパルスの小野伸二。
今シーズン、オランダ・フェイエノールトから日本復帰を果たし、今チームは10戦負けなし。プレーだけでなく、その姿勢もチームメイトに刺激を与え続けている。


試合が終われば、グラウンドに必ず一礼して感謝を込める。
このとき「今日も楽しくサッカーができてありがとうございました。」と心で唱えるという。怪我の影響もあり万全な体制でサッカーができない時期があった彼はできないその苦しみを知っているからだ。
試合中も笑顔を絶やさず走り回る小野選手の背中には、12歳のサッカー少年がだぶる。それはここ数年プロ選手たちが忘れていたもの。中田氏が2006年ドイツ大会後サッカー界を電撃引退をして、世界を放浪しながら探していたものと一緒ではないだろうか。


ワールドカップの最終選考には、毎回サプライズが用意されている。
サッカースキルばかりを追いかけていたが、サポーターやサッカー関係者はその足りなかったもの」が何かこの土壇場になって気づきつつある。






「たのしむ」という信念の元、結果を出している太陽のような存在。






ラストピース・小野伸二。




彼にはチームを導ける力がある。
中田氏が「最高の監督を選んだ」と言った意味が、もう少しでわかりそうな気がしている。
それとも・・・??
バッシングをやめて、すべての日本のサポーターよ、その発表を待とう!






過去に「もしサッカーがなくなたったらどうしますか?」という質問に小野はこう答えている。
  


"サッカーがなくなってしまったら何をしたらいいかわからず、きっと泣いてしまう。"

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