Saturday 10 October 2009

vol.289 【micks push】ねこじゃらしの野原〜とうふ屋さんの話 安房直子の世界


小学校の頃図書室でたまたま手にとった本。秋になると何年たってもふと思い出していた物語。
山間にあるとうふやさんをめぐる6つのお話で、とても不思議な余韻がのこるものだった。
大人になってからも、読んでみたいと思いつつなかなか題名や作者を思い出せず、
つい最近になって安房直子の「ねこじゃらしの野原」という短編童話集だということが判明した。(ネットの力はすごい!)

私の記憶に強く印象に残っているのはこの中の「ひぐれのラッパ」という物語。
この本の主人公のとうふやさんが、秋の野原で灰色の着物を着た子供たちに出会う物語だ。
この子供たちは「幻」、いわゆる幽霊でその物語の結末はどうなったのかは残念ながら全然思い出せない。
澄んだ空気と、紫色の空に浮かぶ一番星をまるでそこで見上げていたかのよう。というか、リアルに日が短くなって薄暗くなった秋の夕方、家へと急ぐ子供の頃の思い出そのものに感じられてしまう。こんなとうふやさん、いたような…。

単なる童話ではない夢を見ているかのような微妙な現実感、それが安房直子の魅力。
この秋の夜長、大人にこそどっぷりはまって欲しい作品である。




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